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舞台復活に合わせてぽつぽつとぼやく、 役者「名取盛之」のブログです。
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────これは夢である。

そして今オイラが見ているのも夢だ。
 
水の流れる音が聴こえる。
ざぁーとか、さらさらとか犬のオイラにとってはどうでもいい事だが、
とにかくそんな風に流れている川を眺めている。
川面に映るものは女の子。
セーラー服という一般的な制服に身を包み、
川縁を歩く純朴そうな黒髪の少女。
それは10年前の彼女。
オイラの飼い主であり、一方的な淡い約束をしていった人。
 
もちろん、十年前なんてオイラは生まれていない。
でも見えるんだ。
川面を眺めているとそんな景色が。
 
別にオイラは特別な犬でもなんでもないよ。
「熊を倒す」なんて勇敢な野望も持ってない。
「実は八犬士だった」なんてついぞ聞いたこともない。
ちなみにオイラは雑種だし。
 
そんなものが見えるはずがないって?
 
──なぜ?
 
だって見えるのだから仕方がない。
それを証明する必要もないし、証明する意味もない。
 
どうしてそんなものが見えるのか?
 
その質問は──
“犬は飼い主の夢を見るのか?”
なんて、どこかの小説みたいな疑問と同じで人間にとっては知る必要のない事でもある。
 
人間は犬にはなれないし、
“犬が何を見て、何を思い、何を語るか?”
だなんて本気で考えることは正気の沙汰とは思えない。
人間は人間の常識の範囲内でしか考えられないし、犬には犬の常識ってもんがあるのだ。
 
そう──だから全部、夢だと思えばいい。
現実の反対は夢って言うじゃない。
犬が語るなんてことも夢。
その犬が飼い主のことを想うのも夢。
 
──だから、オイラが十年前の彼女を見ているのも夢。
 

彼女の名前は町屋美穂。
乾物店の娘だ。
人間の感覚でいうと、
とりたてて可愛いといった感じでもないし、
一際目立つ存在ではない。
要するに下町の普通の女の子なのだ。
オイラと出会った時にはもう大人の女性だったけど、
それでも彼女が変わった所なんて着ているものの違いくらいしか、
オイラには分からない。
 
近くにいて触れ合っていたってさえ、
「嬉しそうだな」とか、「悲しそうだな」とかくらいを感じるのが関の山だ。
 
人間の言葉?
 
もちろん解かるよ。
解かったところでどうしようもないけどね。
 
何度も言うけど、オイラには見ていることしか出来ないから。
そうだよ、オイラがいま語っているのはほんとに独り言なんだ。
聴くものがなければ、消えていくもの。
 
──それはなんだっけ?
 
うん!そう。
──“夢”なんだよ。


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1980/02/16
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