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舞台復活に合わせてぽつぽつとぼやく、 役者「名取盛之」のブログです。
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夢を見ていた。
 
“────すぐに迎えにいくからね”
 
目蓋を閉じた後、眠りにつく少し前。
まどろみの中で聞いた、守られるはずのない約束。
だから、それは夢だと思った。
夢だと思えば、それは自分の願望であり、叶えられなくともただ──
「ああ、あれは夢だったんだ」
と思えるはずだから。
 
そんなものに縋って生きていくにはこの世は世知辛い。
約束よりもまず食べ物が必要だし、
希望よりも世渡りの知恵が不可欠だ。
 
小難しいことのようだけど、要は過去や未来より今を優先しなくては生きていけない時代なのだ。
 
「■■!ほら、ここにおいとくぞぉ」
オイラを呼ぶ声がする。
 
どうやらご飯の時間のようだ。
名前?
名前なんてオイラにとっては意味のないものだ。
だから語ることもしない。
だってオイラは一度だって名乗ったことなどないんだから──。
 
 
さて、名乗ることはしないけど自身のことを少し語ろうか。
 
オイラはずっと待っている。
“────すぐに迎えにいくからね”
もちろん、そう言ってくれた人をだ。
そう──オイラはその守られることのない約束を待っている。
生きていくのに無駄なソレをオイラは捨てられなかった。
 
解かってはいる。
アレはただの、どうしようもない事を受け入れる為の一方通行な気持ちの吐露だった。
だから──約束なんかじゃなかった。
目を覚ましてその人が──彼女がいなかった時にすべて理解した。
またオイラは独りになったのだと。
そうして独りになったオイラがするべきことは生きること。
彼女との約束など忘れて、ただ生きること。
 
だから、夢を見ている。
目の前に広がる川を見つめながら。
いつか彼女が迎えに来てくれる。そんな淡い夢を。
 
ここはとある河川敷だ。
どこにでもあるような、ここでしかないような。
川面を眺めて、そこに移るのは自分しかない。
彼女と初めて会ったのも河川敷だ。
時刻もいまと同様、川の反射が赤く輝き目に痛く、まもなく自分を写すには暗くなる頃。
あの時もただ──川が写す自分をただ眺めていただけだった。
 
眺めること。
それがオイラに唯一出来ること。

だってオイラは犬だから。

語る声も届かない、ただ見つめるだけの存在。
もとよりオイラが語ったところで聴く者もないだろう。
だから、これも夢だ。
あの時の彼女と同じ一方通行の気持ちの吐露。
それが今オイラが語っていることであり、意味のない昔語りだ。
でもいつか誰かに聴いて欲しい。
そんな犬のたわごと。
 
その最初の一言は──
 
“これは夢である”


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1980/02/16
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